蜂の最古の化石は、約2億2600万年前（三畳紀）のものだが、遺伝子系統解析の結果では、約2億8100年前（ペルム紀）にはすでに、現存する多様なグループへの、進化が始まっていたと推定されている。
そして植物が大森林を形成した、石炭紀の中頃（約3億5000万年前）に、幼虫期が植物食の、現存するハバチの様な蜂がすでに出現していたと考えられている。
その中から、現存するヤドリキバチのような蜂があらわれ、栄養効率の良い他の昆虫を、幼虫の餌にするようになったが、最初は植物の組織内にいる昆虫を、偶然餌にしたのではないかと考えられている。
さらにその中の蜂が、腹部の付け根を細くくびれさせ、動く獲物に対応し産卵することを容易にした。
───細腰亜目の蜂である。
胸部と腹部の間がくびれていると思われがちだが、厳密には腹部の第1-2節間でくびれができている。
胸部側にくっついた腹部を、前伸腹節という。
腹部の方は膨腹部といわれるが、単に腹部といわれることが多い。
形態の変化は、尾端の可動域を大きくしただけではなく、飛翔能力の向上にも貢献した。
実は蜂やハエの翅は、飛翔筋に直接つながっておらず、外殻を動かすことによって、それにつながる翅を高速に動かしている。
胸部が腹部と区切られたことで、飛翔筋がより機能的に動く様に、大きくなった胸部の中に配することが可能になったのである。
寄生バチとして進化したこれらの蜂は、三畳紀からジュラ紀にかけて（約2億5000万年～1億4500万年前）、同じ時代に活発に活動していた、完全変態をする昆虫をターゲットにして多様化していった。
ジュラ紀の初め、産卵管を毒針へと変化させた蜂が、有剣類へと進化した。
次に獲物を毒で麻痺させ、卵を産みつけていた蜂は、獲物の居住空間を利用したり、既存の閉鎖空間に搬入して、餌と卵を外敵から守る方法を生み出した。
すなわち麻酔行動の出現、育児部屋の出現、獲物の運搬の出現、そして巣の出現である。
高度に戦略的な生活史と多様性をもつ、狩りバチと呼ばれるグループは、この様に生まれたと考えられている。
腰をくびれさせてから、植物食に回帰したグループもいるが、タマバチは自らの力で植物に虫コブを作って幼虫の餌とし、ハナバチは狩りバチの営巣法そのままに、餌を花粉と花蜜に変え、植物との共進化によって大繁栄を遂げた。